トマトさん
トマトさん (こどものとも傑作集)
田中 清代
福音館書店
売り上げランキング: 9435

■田中清代
このあいだから表紙が気になっていた絵本。

有給であった本日、ぶらりと地元のたまに行く書店に寄って文庫新刊をざっとチェックし、コミックのコーナーに行こうと店内をよぎっているときに児童書の棚をふと見たらこれが表紙みせのかたちでディスプレイされているのが目に入り、思わず足を止めて手にとってしまった。
まぁあこんなところでおあいするなんて!

ぱらりと中をみると表紙から予想していたのよりずっとハートフルな話っぽくて「あらら?」という感じ。でもこれ、いま買わなかったとしても絶対忘れられないタイプの本で、たとえば10年後に「あの本読みたかったなあ」と思ったときにもしかして絶版になってたら絶対後悔するよな。

自分への言い訳を即座に思い浮かべてわたしはそれをつかんだままコミックコーナーに進み、某漫画新刊と共にレジに差し出したのであった。

内容は、ぱら見したときと同様、ハートフル。
じゃあ表紙だけ見ていたときに自分が想像していたのはどういう話だったかというと具体的にはそんなに考えてはいなかったのだけれど……もっと前衛的な、わけのわからん系、みたいな?
――イヤでもこれ、こどもむけの絵本だから実際そりゃないか。

ことばの使い方とか、色使いとか、みんなの表情とかがユニークで。
気持ちよかった。

絵本・児童書 |HINOKIasunaro| 20080811
光車よ、まわれ!
光車よ、まわれ! (fukkan.com)
天沢 退二郎
ブッキング
売り上げランキング: 25461

■天沢退二郎
web本の雑誌”作家の読書道”をなにげなくみたら魚住直子さんの回で、わたしはこのひとの著作を読んだことはないのだがその記事をちらりと見たら『光車よ、回れ!』を採り上げてらっしゃる。これは以前同じコーナーで三浦しをんさんが子どものころ読んだ面白い本として誉めてらっしゃったもので、その不気味な表紙のイラストが児童書の装丁のイメージからはちょっと遠くて気になって検索したのだが当時(2004年7月)は残念無念なことに絶版だった。それが今回魚住さんの回で上がっているのを見るとどうも購入できるっぽい。調べてみたら、2004年8月末にブッキングという出版社から復刻版が出版されていたのだ。ブッキングというのはあの復刊ドットコムで希望が高かったものをふたたび世に出そうという粋なはからいをしてくださる素晴らしい出版社のようだ。おおおおお。
というわけで取り寄せて購入。うひゃー、嬉しい。

この話は小学校高学年の少年少女が水を媒体にして町を乗っ取ろうとしているらしい悪者たちと攻防を繰り広げたたかうのだが、そのときの最強アイテムが「光車」でそれをできるだけ早く探し出して3つ揃えなくちゃ……という話なのだがその過程がすごく面白くて。
子どものときに怖かったこと、不思議だったこと、不気味だったことへのあの感覚がすごく自然に盛り込まれていて懐かしいし、ちょっとおとなびた冒険や自分達の力でなにかを探ったり成し遂げたりするどきどきする気持ち、また町のちょっとした路地の壁の向こうだとか排水口の中だとか干上がった下水用溝の跡だとか、そういったある程度の年齢以上になった者は興味を持っても常識が邪魔をして近づかないようなところが子どもにとっては立派な近道だったり秘密基地への入口だったというあの感覚をそのまんま物語に活かしてくれてあって、正直かなりわくわくしながら楽しんだ。
読みながら、同じではないんだけれども自分が子どもの頃「探検」した近所の溝の脇の細い細い秘密の通り道は面白かったなあだとか、田舎の祖母の家の近所の家と家とのあいだの子どもしか通れないスキマを横向きになって進んで抜け出ると川に出たなあとか、線路高架の下の狭い空き地に網フェンスの破れたところから入り込んで遊んだなあとか、そういうことが記憶の中で刺激されて思い出されてくる。

それにしてもこの物語の主人公たちはまだ小学生なのだけれどリーダー格の少女が姐御肌で仕切っていて、夜に子どもたちだけで電車に乗って図書館に行って調べものをしたり、基地的存在になっている廃工場に集まって作戦会議をしたりする。これの原本が出たのは1973年のことなんだけれど、当時の小学生でこれはわりとあたりまえのことだったのかなあ。親とかに心配されたり叱られたりしてる様子もないし。それとも物語だからこその、ちょっとした背のびをわざと書いてあるのかなあ。
細かいことを言えば驚いて椅子の「上に」立ちあがったりだとか、シチューの鍋を弱火にかけたまま(大家さんに声はかけるけど)出掛けたりするとか、ちょっとひっかかる部分がないわけではないのだけれど、でも中盤以降わくわくする不思議なことやどきどきする冒険がいっぱい出てきてそんなことは吹き飛んでしまった。

仲間の内でも一郎がリーダー格の龍子の性格をヒトコトで表現する部分があるのだけどその端的にして鋭い分析にはおおー、という感じで、全体的に子どもだましのごまかしが無かったように思う。
いいおとなになって初読みしたけれど、すごく面白かった。復刊してくれて感謝感激!

絵本・児童書 |HINOKIasunaro| 20080803
クリスマス人形のねがい
クリスマス人形のねがい (大型絵本)
ルーマー ゴッデン Rumer Godden Barbara Cooney 掛川 恭子 バーバラ クーニー
岩波書店 (2001/11)
売り上げランキング: 9846

■ルーマー・ゴッデン/さく バーバラ・クーニー/え
というわけで、買ってしまいました。
大きめの書店に行ったときにいちおう絵本コーナーやクリスマス絵本特集のコーナーをざっと探したんですが見あたらなかったのでネットで検索しアマゾンは数日で入手可能だったので発注。絵本ってリアル書店ではほんと探し難い。

思ったより、絵本にしては活字がしっかりありました。でも絵もしっかり美しく色刷りで。ちょっと大きめのサイズで、 26.6 x 25.6 x 1 cm。39ページ。
カバーはなくて、絵本独特のあのつややかな手触りがひんやりと手のひらに気持ち良いです。

原題は"THE STORY OF HOLLY & IVY"。絵本版原書には日本版のと同じレイアウトのもののほか、こういうのや、ペーパーバック版のこういうのもあるようです。
The Story of Holly & Ivy  The Story of Holly and Ivy

クリスマスの前日から当日にかけて起きたひとりの小さな女の子とお人形さんのあいだの奇跡のお話。魔法のお話、ファンタジーのお話とも言えるのでしょうか、著者は「願い」というものの力をとっても美しい物語にしてくれています。
この本の由来みたいなことはこの本の末尾にある翻訳者・掛川恭子さんのあとがきに詳しいです。

自分で自分のお人形さんに名前をつけてままごと遊びをするようになったくらいの、お人形好きのお嬢さんが読んだら喜ばれるんじゃないかなあ。
ゴッデンの書く物語はお人形の話なんだけれど、ひとの心のあたかかさ、他者への思いやりに満ちています。物語は夢だけれども、こんな夢をみるのもクリスマスという行事ならではなのではないでしょうか。

もちろんおとなのみなさんにもぜひぜひ。
表紙の絵にきゅっと胸をつかまれた方なら絶対大好きな世界だと思います。

絵本・児童書 |HINOKIasunaro| 20071222
十一月の扉
十一月の扉 (新潮文庫)
高楼 方子
新潮社 (2006/10)
売り上げランキング: 137410

■高楼方子
このお話の主人公は中学2年の莢子という少女で、双眼鏡でふっと見つけた洋館に興味をひかれて自転車で見に行き、それでまあなんのかんのの諸事情がとんとんと運んでなんと2ヶ月間その「十一月荘」で暮らすことにまでなってしまう。
なんという不思議な強引な力学の働いた「物語」であろうか、とびっくりしてしまったのだが、そもそも私が本書を買い求めた書店というのはつい先日読みたい本が選べないとぐるぐるし、挙句の果てに2度目とも気付かず某書を購入して撃沈してしまったトコロと同じであって、どうしてこのあいだはこの本が目に留まらなかったのだろうか、そしてどうして今日は「十一月の扉」を開けることが出来たのだろうか、などと少し考えたりしてしまった。
一番単純な予想される状況はこの本がその数日の間に入荷したということだが奥付を開いて確認したところ本書の出版は去年の秋である。だから先日は無かったとしたら書店員さんがわざわざ「十一月」に向けて発注し、新刊でも話題書でもないから棚差しにし、それを私がまたたまたまタイトルに惹かれて手に取った、ということになる。つまりこれにしたって少しは「物語」な偶然の力学が働いていると言えなくもない。ちょっとだけ「シンクロ」しているよなあ、と個人的に嬉しかったり、して。

実は本書と一緒に、この日文庫化した角田光代の『対岸の彼女』も購入したのだが(というかそれが目的で書店に来た)、今日は現実的な話よりもちょっと浮世ばなれしたのを読みたいなあというわけでこちらを先に読むことにしたわけである。
だが、実際読んでみると、そこここに現代の大人の女が抱える問題というか壁みたいなものについてのエピソードが描かれていて、あらまあ、という感じだった。
もちろん視点が中学生の女の子であるから、彼女の理解を超えるようなことは直接的には描かれていない。けれども、読み手である私は中学生よりはその「大人の女」のほうによほど立ち位置が近いから、どうしたって彼女たちの内心であるとか過去であるとかを忖度してしまう。そして、ああ、とか、ううむ、とか唸りつつ読んでしまう。中学生が主人公であろうと「女」というものを生きる、ということについて触れるならばやはりどうしたってこういうことはごく自然に描かれざるを得ないんだなあというか。
それは、女が「個人」として生きようとするとき――これは「独身で」という意味では決して無くて、結婚してようが何をしていようが何もしていなかろうが、とにかく「自分」というものを押し通して生きようとすることだ――社会からはどういうふうな抵抗や反応をされるか、ということである。

例えば莢子は母親と距離を置いて暮らすことによって初めて母親を母親としてではなく「ひとりの女性」としてとらえ、考えたり批判したりすることを始める。そして、始めは批判的にしか見られなかったことが自分のとらえ方次第で違う見方もできることに気が付いたりするわけだが、それはそもそも「母親」というもので括られる社会的な「縛り」に莢子もまたとらえられていたというかそこで安穏としていたからあえて視線を変えることもなかったわけで、実は「母親」などという言葉で括られる人間像なんていうものは決して一定でないはずなのである。

このことだけでもわかるけれどもこの莢子という少女は中学2年生にしては随分物事をきちんと見ることができるというか、私がもし彼女と同世代でこの話を読んでいたらどう思っただろうか、たぶんこうまで「オトナ」にはなれないなあと舌を巻いたんではないだろうか、などと思ったり。

本書は著者の作品の中でも糖度が高めであるらしい。
確かに上に書いたような内容を含んでいるにも関わらず、物語に流れる空気は穏やかであたたかくて、心にしんみりと響く美しい水彩画のような作品だ。

表紙の藤本将さんのイラストがまた素晴らしい。

中学生のときに読めていたらまた全然違う感想を持てたような気がする。そのころから繰り返し読んでいたらいまここにいる私ではなかったのだろうか。
そんなことを考えたりもした。

絵本・児童書 |HINOKIasunaro| 20071011
頭のうちどころが悪かった熊の話
頭のうちどころが悪かった熊の話
安東 みきえ 下和田 サチヨ
理論社 (2007/04/02)
売り上げランキング: 1973

■安東みきえ/絵・下和田サチヨ
梨木香歩の帯の文句に興味を惹かれて購入。梨木さんの推薦帯というのは初めて目にした。ヤングアダルト的なジャンルだからダメモト的な思いもあったのだが、これが面白かった。

人生訓めいたテーマや台詞、エピソードもたくさん出てきて、うんうん……という、深い共感みたいなのとか、改めてはっとさせられる教訓みたいなのもあるんだけど、そういうのを書いてある、なんかハートウォーミング的な本というのはもう全然珍しくないし、正直「それだけ」の本はどこかうすら寒いというか私は少し遠めに見ていたい気持ちで。安東みきえの作品で素晴らしいと思って、これなら安心して読めるなと思った点は茶目っ気があることだ。オトナにクスリと笑うユーモアっていうよりは子どもの心で茶化しちゃう、うはっ、っていう遊び心。なんか大切なことを伝える、そのことにガチガチになっていないっていうか、何かもう一段余裕のあるスタンスがおおおおお、と頼もしい感じなのだ。

絵本みたいな短いお話が7つ入っていて、微妙にリンクしている話もあるので順番に読んだ方がいいかもしれない。
それにしてもこの話は子どもでも読める文章だけど子どもに読み込まれてはちょっとまだ早いというか、もったいないというか、もすこし世間に夢持っててね、だからまだ読まないでねと云いたくなる話というか……。

「頭のうちどころが悪かった熊の話」
アタマ打っちゃってお嫁さんの姿形を忘れてしまった熊。でも、大事なひとがいた、ということだけは覚えていて……。お嫁さんの実態がこうであるのが素晴らしい。
「いただきます」
食べる動物食べられる動物。最後の数行がもう……こういうの書いちゃう安東さんに惚れたっ!(笑) これを読んで天の摂理の大切さ、を説いて説けないことはないがしかし、という話。
「ヘビの恩返し」
過去や未来だけにとらわれてはいけない、という教訓話とも読めるけど、でもそれだけじゃない何かシニカルな著者の笑みが思い浮かぶ話。
「ないものねだりのカラス」
最後の10行が凄いなあ、こういうの容赦なくぴしゃっと書いちゃって。こわーい。最後の「アホー」はむしろ優しい。手綱ゆるめてくれた感じだ。
「池の中の王様」
ともだちで食うもの食われるものってのは最近テレビで映画でやってたあれと同じだけどこっちのがすとんと来るかな。
「りっぱな牡鹿」
生きることに意味を探すのは若い者の特権だと思う。その答えが「言葉」ではなくて身に沁みてわかったのは遅まきながらここ数年の話なのだけど、このお話にはその答えが安東さん流のことばで書いてある。
「お客さまはお月さま」
星が熊の動きに合わせて動くという発想が凄い。

絵本・児童書 |HINOKIasunaro| 20070624
この庭に
この庭に―黒いミンクの話この庭に―黒いミンクの話
梨木 香歩

理論社 2006-12
売り上げランキング : 20755

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■梨木香歩
昨年末に買ってあったものの読めてなかったのをようやく。
絵があるから絵本かと思っていたら結構活字量多い、あ、これ児童書かあ。……うーん、暗いお話だなあ。
後で気が付いたが帯に「もう一つの『ミケルの庭』の物語」とあるんだね。ふーん。

このお話を読んでいったとき、この「私」が男性なのか女性なのか、いったいどういうひとなのかがはっきりしなくて、手探り状態たった。状況とかが少しずつ少しずつわかっていくと、ああ……と心の中で深く息をつかなければならなかった。この物語の主人公は、苦しんでいる。

そしてこの物語の主人公が「誰」かがわかったらその……なんといったらいいのか「ああ、やっぱり」という思いと「あなたには幸せでいてほしかった」という思いとが混ざりあったような、同情と言うのか落胆と言うのか、でもそれに懐かしさと前の物語から今に至っている成長に少し安堵するような感情が沸き、ぐるぐると回って落としどころがない複雑な思いのまま読み進むことになる。

主人公は何かに苦しんでいるんだけれど、それと真っ向から対抗しようとか戦おうとかいう段階はもう既に過ぎてしまったようで今はその苦しみを胸の中に取り込み、自分の中で何とか解毒できないものか、それともこのまま苦しみも自分のものとして沿い続けようか、という感じでただもうじっと静かに息を潜めて毛布の中で丸まっている。しかしアルコールを絶えず呑んだり、首のないサーディンが体の中を泳いだり、その心はもう、ギリギリのところまで追い詰められているのだ。そんな主人公に、小さな女の子が、続いて黒いミンクが、やってくる。

ミンクというと私の頭の中ではすなわち毛皮のことで、しかしこの物語に出てくるミンクは生きてミルクを飲んで主人公の指に噛み付いたり舐めたりする存在であって、紛れも無い「生き物」であって、それが妙に面白かった。しかしまたなんでよりにもよって「ミンク」なんだろうか、梨木さんのイメージじゃないよなあ。……と、思っていたら物語の終盤でそういうような物言いが出てきておかしかった。

この物語はこれだけ読んでもまあ良いんだろうけど、できれば『りかさん』『からくりからくさ』『ミケルの庭』を読んでから読んだほうがベター。これらの世界は、繋がっているから。
ああ、彼女らも梨木さんの中で生き続けてくれているんだなあ――と嬉しかった。

絵本・児童書 |HINOKIasunaro| 20070127
ルート225
ルート225ルート225
藤野 千夜

新潮社 2004-12
売り上げランキング : 203350

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■藤野千夜
BBSで現役中学生のお嬢さんに教えていただいた。初めての作家さんです。
これはYA(ヤングアダルトの略らしい。ライトノベルとはまた違うんだなあ)だが、略歴によれば芥川賞作家だし普段は純文学畑のひとらしい。
表紙のイラスト(漫画家の志村貴子さんによる)が可愛いのでそれは書店で見かけたときに覚えていたのだが。

中学2年生のエリ子と1学年下の弟ダイゴは、ごくふつーのある日、突然、「家に帰れなくなって」しまう。いや、実際「家」には帰るのだけどそこには両親がいつまで経っても帰ってこないのだ。ある条件下で家に電話をするとママが「どこにいるの? 早く帰ってきなさい」と応じてくれる。なのに、その母親のいる家には帰れないのだ。
隣の家のおばさんも、商店街も、クラスメイトもいる。でも、何かが少しずつ、違う。数年前亡くなった筈のクラスメイトが生きていたり、ぎくしゃくして自然消滅していた筈の親友と仲直りしていたり、そのほかぼんやりしていれば気がつかないような些細なことが、ちょっとずつ、違う。

ここは、どこ? どうすれば帰れるの? といち早く事態を察知して騒ぐ弟に対し、何言ってんのこいつ、んなわけないじゃん、信じらんないよ、とかたくなに自らが陥ったパラレル・ワールドを否定するエリ子。だが段々そうも言っていられなくなってきて……。

中学生のときに自分が何を考えどういうふうな感情を持っていたかというのは残念ながら今リアルに思い出すことはできない。たぶん、こうだった、ってのはあるけど。このお話を読んでいると私はエリ子ともダイゴとも違う中学生だった。でも、ところどころ、何か、とっても「近い……」と感じる箇所がいくつかあって、そのたびになんともいえない気持ちになった。甘酸っぱい、ううん、そんなウソくさいことじゃなくてさ。

以下は未読の方は読んじゃダメ。

最後まで読んで、こういう終わり方をするのか! ――驚き、解説を読んだけどほぼ何の役にも立たず、ボウゼンとしつつもしかしこういう終わり方じゃないとそれこそ「子どもだまし」になってしまうのかななどと考えた。いろんな解釈ができるとは思うけど、やっぱりあれかな、「子離れ親離れ」をすんごくまっすぐに描くとこれくらいのエネルギーと覚悟の必要なことなんだよ、分かってる? ってことなのかな。でもここまで「会えなくなる」っていうのは厳しすぎるけど……。彼らの両親の身になるとたまらなくつらい。身を切られるようだろう。しかし一方で意外に子どもの方はさっさと親離れして自立していくものかしらん、そりゃ悲しいだろうけどでも中学生くらいってある意味親から独立することを一番夢見る時期かもしんないし、などと思ったり。どうだろう。うーん。

藤野さんの他の作品も是非読んでみたい。



絵本・児童書 |HINOKIasunaro| 20060921
ふつうに学校にいくふつうの日
ふつうに学校にいくふつうの日ふつうに学校にいくふつうの日
コリン マクノートン Colin McNaughton 柴田 元幸

小峰書店 2005-05
売り上げランキング : 73487

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■コリン・マクノートン・文/きたむらさとし・絵/柴田元幸・訳
たまたま脇の広告で目に留まって興味を持ったが何せ絵本は単価が高いので買わなかったのだがそれから折に触れて思いだし「いったいどんな話なのか」と気になるのでネット購入した。

ふつうの男の子がふつうに起きてふつうに朝の支度をしてふつうに学校に行ったらぜんぜんふつうじゃない先生がやってきて……。
「ふつう」の羅列にぴぴーんときた方にオススメ。

このネタ、大人向けの寓話だったら後半がもっとダークなものになりそうで、それをあれこれ空想しても面白い。深読みすればどこか「恐怖」の味もするような。

絵が可愛いのと、何より色遣いが本当に美しくて素晴らしいです。



絵本・児童書 |HINOKIasunaro| 20060910
びっくり館の殺人
びっくり館の殺人びっくり館の殺人
綾辻 行人

講談社 2006-03
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■綾辻行人
「ミステリーランド」の第9回配本にして館シリーズ最新作。館シリーズは読んでましたよ昔ちゃんと。講談社文庫で。どこまで読んだんだか、5作くらいは読んだんだけど。「同じ建築家による館」で「人数限定」で「殺人事件」だもん。本格好きにはたまらないシチュエーションだったなぁ。
その新作です。

ただこれ、フツーの単行本とか文庫で出てたらまず買わなかったですね、マイブーム去ってしまって久しいのでちょっと今更感が。
要は、「ミステリーランド」です。本屋で一度は目にされていると思うんですが、箱入りでね、丸く穴が開いていて本体の絵柄が一部覗ける統一フォーム。「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」と銘打たれたこのシリーズ。

配本が始まったときからソソられて、出るたびに「うぉう、やっぱこの装丁はいいざんすねえ」と手に取ったりはしていたものの、残念ながら「装幀だけのため」に買うには¥2,100円は高すぎたのでございます。「いつか、中身も好きな作家さんが書いてくれたら」と思っていたの、買いたかったのコレ……!

3月に出たとき保留にしていた当作品を、今日初めて手にとってカバー外してみて冒頭読んでみて、すとん、と入れそうだったので「やっぱ読んじゃおう」と踏み切りました。見れば見るほど装丁凝ってます。イイです。本体の頁の端がとんがってないとか……口絵あるし挿絵あるし。良いなあ〜。

読了。
なるほど不思議なことや変わったこと、スリリングなことに胸を躍らせる子どもが読んだら喜びそうな話だなぁ――、という感じでした。
おとな読者には、そうですね、まあ、――面白かったですよそれなりに。でも、どうして私が「館シリーズはもういいや」と思ったのかをなんとなく思い出す結果となりましたね(^^;

いやー……密室ものだったんでこれはどう解くのかなと考えていたんですがそういうアレですか。「叙述トリック」(←白文字は完全ネタバレだから注意)ってヤツですね。ふーん。良いんですけどね別に……折角だからびっくり箱をもうちょっと使ったのが楽しかったのになっ。

あと、子ども向けと見せかけて実はけっこうグロいネタももってきてました。どれもさらりと流されちゃってましたけど。

主人公が晩の7時頃出掛けるのにあわてて「おいおい、今頃からどこへ」と聞くおとうさんと、それにいちいち注釈をつけている綾辻さんが面白かったです。っていうか、ハナシのあちこちに現代の子ども達へ向けてメッセージが挟まれていて、そこらへんはこういう企画ならではだなあ、と思いました。



絵本・児童書 |HINOKIasunaro| 20060610
ジョナさん
ジョナさんジョナさん
片川 優子

講談社 2005-10
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■片川優子
以前「本の雑誌」で吉田伸子さんが採り上げてらしてちょっと琴線に触れる感じがして、あるとき地元書店で見つけて手に取るまではしたんだけどやっぱ保留としたもの。頭の隅にずっと引っかかり続けていたので今度見つけたら読もうと思っていたのだ。何故ひっかかっていたのか。それはタイトルのせいです。
わたしは「ジョナサン」という「名前」が好きなのです!

それだけです……すみません。しかもあの有名な『かもめのジョナサン』は未読という。どないやねん。

読み終えてその早さ故にああこれはそういえば児童書であったなと気付かされたのは前にもあったな。児童書という認識で読んでいなかったのは主人公が高校2年生だからだと思うけど。高校生は「児童」じゃないから(笑)。

片川さんは現役高校生で、これを執筆されたのは高校2年のとき(完成は3年生になる前の春休み)。1987年生まれだもん。長期休暇のときに書いてるってのが……高校生だよなあ……って遠い目になっちゃう。

なるほど高校生のお嬢さんが書いた小説だな、という感じですが、同時に高校生のお嬢さんにしか書けない思い&台詞だよな、とかいうのも随所にみられて。前半はそれほどとも思わなかったのだけど、中盤から後半にかけては才能の煌きをびしばし感じさせられました。

ジョナさんというのは外人でもハーフでもないそこらの日本人のおにーさんなのだけど、そして主人公の女の子がぽーっと一目惚れしてしまうくらいの「異様にかっこいい」ハンサムさんという設定なのだけど、それを表すのに使われた表現が「色白の速水もこみち」。

ネット上で見つけた著者インタビューでインタビュアーがこれを読んで「のけぞった」と書いていましたが私もご同様。わははは。しかもあのままじゃ駄目なんだ、「色白の」なんだ(笑)。

これと同様、固有名詞がフツーにばんばん出てくるあたりがなんだか面白かった。チェーン店「ジョナサン」も勿論、出てきます。

将来どうしたいのかなんてわかんない、目の前の進路設定すらも決めかねて途方に暮れている、そんな現役高校生に是非おすすめしたい一冊です。

ちなみに先程の記事によれば片川さんには将来の夢がきっちり決まっていて、それは作家ではない、とのこと。これだけの才能があるのに他の道を突き進む潔さ、なんてすごいんだ。ちくしょう、まぶしいゼ。


絵本・児童書 |HINOKIasunaro| 20060520
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桧あすなろ

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