■長嶋有
本の帯がお祭り騒ぎしている。思わず買ってしまった。しかも版元がエンターブレイン。ここって須藤真澄の漫画とか出している出版社だけど……小説、しかも純文学も扱うんだ、と思ったら帯裏に異色だと書いてある。
エロマンガ島というのは実在するらしい。ゲームかなんかで出てくるので知っているひとは知っているらしい。長嶋さんて別名でゲームのエッセイとか書いてるし相当なゲーマーみたいだな。
「異色作品集」とあるように本書には5つの話が収められているがちょっと長嶋有のふだん書くのと違う雰囲気がある。なお、巻末に「補遺」があり、著者がそれぞれの作品に短い説明を加えてあるのも珍しい。
「エロマンガ島の三人」
中篇。週刊ファミ通編集長バカタール加藤氏の体験談から着想を得たモデル小説、だけどあくまでこれはフィクションとのこと。主人公とその恋人の空気はいつもの長嶋ワールドなのでそのへんが作られた部分かなと想像する。素朴な島のひとびととの関わりとか描写よりも急遽ピンチヒッターでやってきた日置という男が興味深い。そして同行の久保田という男がほんとにくどいほどウザさを撒き散らすように懇切丁寧に書かれているのはなんでだろうと一瞬考えてしまった。久保田というのはまあいわゆるオタクだと思うんだけど、常にモノを食べたりわあわあ興奮したりしている。しかし主人公はどこかこの久保田のことが好きみたいで、そう、まあ、憎めないキャラではあるんだよね。とりあえずこういうふうに日本からの三人が特徴ありまくりな面子なので島での様子が(こんな島名なのに)むしろ普通の島で拍子抜けとも云える。
「女神の石」
SF。近未来小説かな。たぶん最終戦争のあとの話だと思うんだけど妙な怖さというかロアルド・ダール的な空気があって終わり方にはえっ、と戸惑った。
「アルバトロスの夜」
これもSF。そしてゴルフ小説。ゴルフについてはほぼ知らない私だけどこのお話は好きだった、なんか設定とか雰囲気が良いのだ。つぶれているのかと思うようなさびれたコース。アンドロイドみたいな無口で正確なキャディー、終わったホールのライトは節電のために消されていく(時間は夜。夜にゴルフコースって回れるもんなの?)。「なんだか、通り過ぎた世界がどんどん消えていくみたいだ」。美しい……。
「ケージ、アンプル、箱」
『パラレル』で三人の相手を「パラで走らせている」とのたまった、顔面至上主義男の話。結局男っていうのは感傷的だという話、かなあ。
「青色LED」
「エロマンガ島」の日置の話。まあそうだったんですかあ。まさか長嶋有の小説に殺人が出てくるとは思わなかったなあ。ミステリーだとごくごくありふれすぎているシチュエーションで今更書かれもしないから逆に新鮮だった。
しかしこの帯はこれが受賞作と間違ったのも無理はないと思いません?
隅っこに小さく但し書きがしてあるけど……。
ちなみに当の受賞作の『夕子ちゃんの近道』のほうはごく地味に活字で書かれた帯がしてある。やっぱケンカしたから反動でエンターブレインのほうに……とか憶測しちゃうなあ。



純文学
|HINOKIasunaro| 20080621












