スリーピング・マーダー
スリーピング・マーダー (クリスティー文庫)
アガサ・クリスティー
早川書房
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■アガサ・クリスティー
初読である。
「えええクリスティー好きとか散々云っておきながらこの超々代表作をいままで未読だっただとう!?」とののしられるかもしれない。
実はわたしは未読のクリスティー代表作がいくつかある。そしてその全てがミス・マープルものである。
そう、わたしはマープルものを中学のときに読んで以来合わない、と思い込んできたのである。「このおばあさんのまだるっこしい説明方法は結論を早く欲しいわたしには向かない」と初対面の印象で極めつけてしまったのである。
かくてポアロもの、トミー&タペンスもの、ノン・シリーズものは二度三度と繰り返し読んだが手付かずの領域はいつまでも残り続けていた。それはそれで気にならなかった。

今回気が向いたのは先般読んだ恩田陸『小説以外』で彼女がこの作品を絶賛していたから。実際に読んでみるとミス・マープルの探偵ぶりは全然まだるっこしさを感じさせず、するすると読めてしまった。あら大丈夫じゃない。
久しぶりに読んだクリスティーの感触をひとことで云うならば”すごく安心”だった。だって女王の、しかも代表作がつまらないわけはないからぜーんぜん心配しなくていいのだ。しかも本格だから様式美なことも約束されている。どっかですごいアクロバットがあるっていう気構えもいらない。必要なのは、英国ならでは、クリスティーならではの描写・会話の妙をゆったりと愉しむ読み手のこころのみだ。

それにしても『アクロイド』を読んだときも思ったことだけれどクリスティーの推理小説というのはある意味すごく公平というか真正直な書き方がなされていて、しかも本格の「良し」とされるルールをきちんと律儀に守ってある。
つまり早い話がミステリーをある程度読んでいる人間には途中で犯人が一目瞭然にみえてしまうことがあるのだ。この作品もそうだった。
だけれども同時にある程度ミステリーを読んできてなおかつ、クリスティーを読みたい、という人間にとってはもはや彼女の魅力はフーダニット(犯人あて)なんぞにとどまるものではないということは百も承知のことである。
そして勿論そんなパターンばかりではなく、最後の最後まで犯人がわからず「えええええっ」と驚かされたこともやはりたくさんある。そうきたか!ってのがいくつもある。むろんその場合もきちんとルールは守られている。
つくづく、凄い作家だ。百年前の小説なのに全然古くならない素晴らしさを実感する。

『スリーピング・マーダー』は文字通り眠れる殺人者のことで、18年前にある田舎の家で殺人事件があったらしいのに何も記録にも噂にも残っていない。つまり当時は殺人があったとみなされず、被害者は駆け落ちで外国にいってしまったと信じられていたのである。
ある偶然からその「事件」について知った娘とその夫は好奇心と正義感から真相を探り出そうと探偵ごっこをはじめるが……。

英国の家具や家の描写なんかが楽しくてうっとり。若い二人とミス・マープルが主軸にいるのでなんだかどこかほんわかした空気があってちょっと和める。
いままで読まず嫌いに近い状態だったけど、認識を改めないといけないなあ。

翻訳ミステリー |HINOKIasunaro| 20080621
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桧あすなろ

  • HN: 桧あすなろ
  • 奈良在住



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