ぼくは落ち着きがない
ぼくは落ち着きがない
長嶋有
光文社
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■長嶋有
「最新作です。出版ほやほやです」
「ようやく長嶋有読むぜキャンペーン既刊本コンプリートしてやれやれと思っていたらまた出た。正直相性どんぴしゃという感じからは程遠いからどうしようか迷ったけど青春小説で文化系部活モノでしかもそれが”図書部”ときたら読まないわけにはいかない」
「帯に”島田雅彦『僕は模造人間』山田詠美『ぼくは勉強ができない』につづく『ぼくは〜』シリーズとも言うべき最新作”とありますね」
「誰が書いたんだこれ」
「あ、いますごい表情しましたね」
「いやいやわたしは何も申しておりませんよ? 版元は……光文社かあ。山田詠美のあれって光文社だっけ?」
「や、新潮でしょう。……今調べたけど島田雅彦のそれも新潮ですね。読んだことないけどレビュー見ただけで面白そうだなあ」
「そりゃふたりともすごい作家だもん。それと並べちゃう?みたいな。最初目にしたときですら”大きく出たなあ”と思ったけどねえ、読後にはもう……」
「ハハハ、でもよく見るとこの二作と並ぶ傑作だとかそういうことは書いていないわけですよ、単にタイトルのはじまり方が同じですよと言ってるだけ」
「だけど”シリーズとも言うべき”って書いてあるよ。”べき”だよ。別に嘘書いてあるわけじゃないけどいい度胸してんじゃん、くらいは」
「そんなに面白くなかったですか」
「面白くなかった」
「下手ではないですよね」
「少なくとも文章はね。いちおう最後までするっと読めたしね。でも面白いかどうかって訊かれたら」
「まあ、共感できるところがほとんどなかったんですよね。みんな絵空事」
「そう、傍観者にしかなれない。主人公自体が懐手しているようなスタンスだし。ってゆうかどうなの、この話に出てくる高校生とリアルで同世代の読者には面白いの?共感を呼ぶのかなあ」
「うーん……なんか内輪受けみたいなネタはいっぱい出てきましたけどそれって今の高校生じゃなくてむしろ著者と同年代にウケそうなネタじゃないのかっていうのはありましたけどね」
「写真週刊誌とか。いまの高校生って読むのかなあ」
「さあ」
「だいたいこれ高校生、しかも主人公3年にしては幼稚じゃない? 中学生の話だと云われたほうがしっくりくる」
「高3にしては受験とかそういう身近な進路に関する悩みがほぼないってのも不自然ですしね。もっと揺れてるはずで、その中に友人関係とか家の問題とか絡まってくるもんだと思うし」
「表紙のイラストの女の子だって中学生にしか見えない」
「表紙は関係ないですよね」
「中表紙の椅子くるくるしてる女の子が可愛い」
「……えっと、装画は衿沢世衣子さん、」
おかえりピアニカ (Cue comics)「知ってる?」
「知らないですね。イマドキの絵柄って感じです。調べたら面白そうな漫画を描かれてますねー」
「話戻すけどね、この著者って決して下手じゃないんだけどでもなんていうかどれも淡々としているというかタマシイに訴えかけてきたり萌えをもぎとっていったりとゆう、そうゆうなんか、ガツーンとクるものがないんだよなー」
「同世代の男性の方には受けているという意見もありましたが」
「あー『パラレル』の解説?」
「まあ。ゲームやるひととか、男女関係のスタンスとか、そういうのが共感を呼ぶのかなと推測しているんですけど、あの、なんていうか、情けない系っていうか何事に対しても受身というかやる気とか覇気がいまいち欠けてる現代人の葛藤?みたいな」
「無理矢理意義付けしようとしていないか」
「そうともいえます」
「この話の主人公もどうしたいのか方向性が見えない。しかもそのことについて悩んでいない、少なくともそういう描写がほとんどない。見えないもどかしさってのが青春だろー?」
「それはひとそれぞれじゃないですか。私は著者自身が高3のときこういう感じだったのかなとか思いましたけど。志望校私立の夜間とか出てきますし」
「あー。ガツガツしてなかったと?」
「このひとはどうやら”自分”を書いていくタイプの作家みたいですから」
「んーそうかあ。……でもねえ」
「はい」
「でも、だったらなんでこのタイトルなんだよーと言いたくなるっていうか」
「……。作者が自分のキャラをそう思っているんじゃないですか」
「……”キャラ”」
「ガツガツしてないし悩み苦しんでいるわけでもないんだけどでもだからといって落ち着いているわけでもないんです」
「あー」
「内面はぐるぐるしてますよって云いたいんです」
「あー……」
「そんで”そんな俺ってばー”っていう自己愛をそこはかとなく感じる私は意地悪でしょうか」
「うーむ。いや。あながち外れてもいないかもしれな――」
「あー!!」
「――!?」
「わわわ」
「何」
「ここここの本のカバーいま何気なく剥がして表紙見ようとしたんですけど……っ」
「おお。――なんだこれキャラのプロフィール……じゃない、この話が終わった後のそれぞれの人生を紹介してあるんだ」
「そうですよー」
「……」
「……」
「まあ、ちらっと見たかぎりだとやっつけ仕事っつーかどうでもいいな」
「ほんとですね。本編が面白かったわけでもないし」
「うわ言ったっ」
「将来とか書かれても興醒めですよ。本編ですけど、図書部っていう設定はストライクゾーンだっただけにもったいない感が強いです」
「本ネタとかもちょこちょこあって、まったく面白くないわけじゃなかったけどだからどうよ、ってなっちゃうんだよな」
「この作者、オタクなんですよ! で、オタクっていうのは熱心だけどその情熱が他人にはわからないことがわからずに空回りしちゃうことがままあるっていうか」
「語弊が生じるコメントなので断定はどうかと思うがまあニュアンスは汲もう」
「別に読んで不愉快にはなりません。でも後に残らない」
「なんていうか”せっかく高校生を書いたのに”って感じかなあ」

純文学 |HINOKIasunaro| 20080622
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桧あすなろ

  • HN: 桧あすなろ
  • 奈良在住



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